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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)8711号 判決 1999年8月31日

原告

ジャパン・ノップ株式会社

右代表者代表取締役

【A】

右訴訟代理人弁護士

宮内勉

宮内俊江

吉田保之

被告

日本仮設株式会社

右代表者代表取締役

【B】

右訴訟代理人弁護士

伊東孝

水沼功

主文

一  被告は、原告に対し、金七〇万円及びこれに対する平成九年九月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを七分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成九年九月二七日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

(争いのない事実)

一  当事者

1 原告は、建設用型枠資材の製造、販売等を目的とする株式会社である。

2 被告は、建設用資材の製造、販売等を目的とする株式会社である。

二  原告は、原告代表者が有する特許権(発明の名称「コンクリート用連結型枠及びその連結支持金具」、特許番号第一九三三二五四号)の専用実施権を有し(以下「本件専用実施権」という。)、昭和五八年より右型枠(以下「本件製品」という。)に「ノップ(N・O・P)」なる名称を付して製造、販売をしている。

三  原告は、被告との間で、平成元年八月一五日、「業務提携に関する覚書」により、本件製品の継続的売買基本契約を締結した(乙1。以下「本件業務提携」という。)。その内容は、概要、次のとおりである。

1 原告は北海道を営業の対象地域としない。(一条A一項)

2 原告は東京地域(関東甲信越)においては被告と競合しないように配慮する。(一条A二項)

3 被告は関西地区を営業対象範囲としない。(一条A四項)

4 被告は、北海道以外の地区で使用するNOP工法に係る資材等を北海道地区から持込まない。(一条D一項)

四  原告と被告は、平成三年七月一八日に、「売買契約書」と題する書面により、本件製品の継続的売買基本契約を締結した(乙2。以下「本件契約」という。)。その内容は、概要、次のとおりである。

1 契約期間は二年とし、期間満了時に双方に異議がない場合には更新される。(一条一項)

2 被告は、本件製品を製造しない。(三条一項)

3 被告は、北海道より本件製品の持ち出しをしない。また、被告が北海道の業者に販売及びリースをする際は、その業者が本州地域に持ち込みをしないように指導する。(三条二項)

4 被告は、北海道以外の地域において本件製品についての営業行為を行わない。(四条二項)

5 原告は、北海道において本件製品についての営業行為を行わない。(四条三項)

五  被告は、平成八年七月ころから平成九年六月ころまで、北海道建設新聞社発行の北海道建設新聞に「ノップ(N・O・P)製造発売元」なる名称を表示した本件製品の広告(以下「本件広告」という。)をした(甲1、8ないし10、12、33)。

(原告の請求)

被告が本件広告を掲載したことは、不正競争防止法二条一項一一号の虚偽事実流布行為に該当し、同行為により原告の信用が毀損されたとして、原告は、被告に対し、同法四条に基づき損害賠償(無形損害)を求めている。

(争点)

一  原告と被告は、本件広告が掲載された当時、不正競争防止法二条一項一一号にいう「競争関係」にあったか。

二  本件広告により原告の信用は毀損されたか。

三  被告が損害賠償責任を負うとした場合、その額。

第三争点に関する当事者の主張

一  争点一(原告と被告は「競争関係」にあったか)について

【原告の主張】

不正競争防止法二条一項一一号所定の「競争関係」にあるというためには、現実に商品販売上の具体的な競争関係にあることを要せず、両者がともに広く同種の商品・役務に係る業務関係にあればよいと解釈すべきであり、当該商品の営業地域や市場が競合するか否かは競争関係の存否を左右しないというべきである。

原告と被告は、ともに建築用資材あるいは建築用型枠資材の製造、販売という点では現実に営業地域が競合しており、本件製品の販売に関しても両者が現実に競合した経緯があるのであって、継続的売買基本契約により両者の本件製品についての営業区域が区分されているとしても、原告と被告とは、本件広告が掲載された当時、競争関係にあったことに変わりはない。

【被告の主張】

不正競争防止法二条一項一一号にいう「競争関係にある」というためには、営業上顧客又は供給者を共通にする関係をいい、営業地域が重なり合っていることが必要であり、少なくとも、営業地域の拡大や需要の動向などによって顧客が共通化するという、潜在的競争関係が存することが必要である。

本件契約には、被告は北海道以外の地域において、原告は北海道において、それぞれ本件製品の販売行為を行わないとの約定があり、これは、本件広告が掲載された当時、遵守されていた。

したがって、原告と被告は市場が全く競合しなかったから、不正競争防止法二条一項一一号の「競争関係」には該当しない。

二  争点二(本件広告により原告の信用は毀損されたか)について

【原告の主張】

1 本件製品に付されたノップという名称は、原告が昭和五八年から継続的に使用してきたものであり、建設業界では著名である。

2 北海道建設新聞は、一日平均発行部数が約一万六〇〇〇部で、業界において広く購読されており、北海道外へも一日平均八〇部が発行されている。したがって、本件広告は、北海道内のみならず、北海道外の建設業者の目にも触れることになる。

3 本件広告により、原告が倒産し、本件製品の製造販売権を喪失したかのごとき印象を与え、原告の信用が毀損されたことは、次のとおり明らかである。

(一) 原告は、平成七年ころ、取引先代表者から、北海道の関連会社から派遣された社員が、本件広告により被告が本件製品のメーカーだと思っていたと話していた旨聞かされた。

(二) 原告は、平成八年六月二〇日ころ、株式会社遠藤工務店から本件製品の見積依頼を受けて見積書を提出したところ、同社から、原告は倒産して本件製品の製造販売権を被告に譲渡していることが土木業界に広く伝わっており、業界紙にもそのような広告がされていると言われ、工事を受注することができなかった。

(三) 平成九年八月ころ、原告と取引関係のある建設会社の札幌支店勤務の社員が、本件広告を見て、本件製品にかかる特許権が被告に譲渡されたかについて原告に問い合わせをしてきた。

(四) 原告は、平成九年九月五日ころ、総成建設株式会社から本件製品に関する見積依頼を受けて見積書を提出したところ、原告は本件製品の製造販売権を被告に譲渡して倒産した、業界に通じている被告が業界紙にノップ(N・O・P)の製造発売元である旨の広告をしているとして、工事を受注することができなかった。

4 特許権に関する専用実施権、通常実施権の性質等については、一般社会人には知られていないのが実情であるから、本件広告により、原告が本件製品にかかる特許権に関する権利を有しなくなったと理解するのが通常である。

【被告の主張】

1 原告代表者は、被告代表者らに対し、平成元年四月一日から平成二年九月末日までの間、何回も、「被告がノップの北海道の育ての親なので、北海道におけるノップについては一切を任すからメーカーの立場で営業して欲しい。ノップを北海道で育てて欲しい。」旨述べたので、被告はその意向を汲んで、メーカーを代行したPRの一環として、拡販のために本件広告を行っていたものであり、本件広告は原告の要請、許諾に基づいたものである。なお、本件広告には、設計監理を原告がしている旨も併せて表示している。

2 北海道内にしか配布されない北海道建設新聞に、設計監理者を原告と表示するとともに、被告の名称を本件製品の製造発売元として掲載したからといって、北海道内において余り知られていない原告が倒産したとか、本件製品の製造権を喪失したとか認識されることはあり得ない。北海道建設新聞が北海道外に発行されているとしても、一日八〇部ではほとんど出ていないに等しく、しかも地方業界紙の地方広告欄に関心を持って購読しているのは稀であると考えるべきであるから、本件広告による影響はほとんどない。

また、特許権は通常実施権により実施される場合もあるから、製造元と称する者が原告の外にいたとしても、特許権を他に譲渡等したとまで認識されることはない。

4 原告の主張は不合理である。

原告が倒産して本件製品の製造販売権を被告へ譲渡したと需要者が認識しているのならば、原告へ見積もりを依頼すること自体が不合理であるし、被告へ見積依頼をしてこなかったことも不合理である。また、北海道で発行頒布されている新聞に掲載された本件広告によって、原告と従前から営業上のつながりがある株式会社遠藤工務店等からの受注ができなくなるとは考えられない。

三  争点三(本件広告により原告が受けた損害の額)について

【原告の主張】

本件広告により、本件製品の製造元として確固たる地位を築いていた原告の信用は著しく害された。

これを金額に換算すると、五〇〇万円を下らない。

【被告の主張】

原告が仮に主張のとおりの損害を被ったとしても、右損害と被告の行為との間に何ら因果関係はない。

第四当裁判所の判断

一  争点一(原告と被告は「競争関係」にあったか)について

1  争いのない事実記載のとおり、原告は、建設用型枠資材の製造、販売等を目的とする株式会社であり、被告は、建設用資材の製造、販売等を目的とする株式会社であるから、両者は、同種の商品及び役務に係る業務を行っていることが認められる。

2  被告は、本件契約に基づき、被告は北海道以外の地域において、原告は北海道において、それぞれ本件製品の販売行為を行わないとの約定があり、同約定は遵守されていたから、市場競合性がなく、競争関係がないと主張する。

しかし、不正競争防止法二条一項一一号は、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する」営業誹謗という行為態様を不正競争行為と位置づけたものであるところ、同法は公正な競争秩序を維持することを目的とすること(同法一条参照)から、同号においても「競争関係にある」ことが要件とされたものと解される。そして、必ずしも現実の市場における競合が存在しなくとも、市場における競合が生じるおそれがあれば、公正な競争秩序を維持する必要性は認められるから、同号にいう競争関係も、市場における競合が生じるおそれがあれば足りるものと解すべきである。

証拠(甲20の資料2)と弁論の全趣旨によれば、本件広告が掲載された当時、本件契約に基づき、原告は北海道において本件製品を販売しておらず、被告は北海道においてのみ本件製品を販売していたと認められるから、本件製品に関する限り、原告と被告は現実の市場において競合していなかったものと認められる。

しかし、それはあくまでも本件製品に限定されたものである。また、本件製品に関して競合していなかったのは、原告と被告の双方が、本件契約に基づく不作為義務を履行していたからにすぎず、原告は、被告と本件業務提携を結ぶまでは、自ら北海道において本件製品の営業活動を行っていたと認められること(甲20、被告代表者)、被告は、本件契約締結以前は、東京営業所において本件製品の営業活動を行っていたと認められること(甲20、乙1、15)からすると、原告は北海道において、被告は北海道以外において、本件製品に関する営業活動を行う客観的能力を十分有していたものと認められる。

したがって、原告と被告は、本件広告が掲載された当時、市場において競合するおそれがあったものと認められるので、不正競争防止法二条一項一一号の「競争関係」があったものというべきである。

二  争点二(本件広告により原告の信用は毀損されたか)について

1  証拠(甲20、乙7、原告代表者)と弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告は資本金一〇〇〇万円で定款に株式譲渡制限の規定が設けられているいわゆる小規模閉鎖会社である。

(二) 原告は、本件製品の販売開始以来、本件製品を、独占的に製造していた。

(三) 原告は、昭和六〇年一〇月二二日、旧商号の「清和エンジニアリング株式会社」から現在の商号に変更したが、それは本件製品名を使用したものであった(なお「N・O・P」は、「New Original Paneling」の頭文字を並べて作った名称である。)。

(四) 原告は、昭和五八年以降、自ら本件製品を多数販売し、本四連絡橋関連や阪神高速道路関連を初めとする各種公共事業関連工事に多数採用され、その数は昭和五八年に一六件、同五九年に二九件、同六〇年に二四件、同六一年に二八件に及んでおり、また納入先も、大手ゼネコンの共同企業体が多くを占めていた。昭和六二年以降は、被告の受注による主として北海道方面での工事への納入が多くなっているが、原告による受注も各種公共事業関連工事を中心に継続して行われている。

右事実からすると、原告の会社規模と比較して本件製品は相当程度の信用を有し知名度があったものと認められ、原告が本件製品の製造元であるということは、原告の建設業界における信用・名声・評価の基盤となる重要な要素であると認められる。

2(一)  そして、本件広告には製造元として被告が記載されているので、被告が本件広告を掲載することは、虚偽の事実を流布することになるところ、本件製品は原告が独占的に製造しているとの認識を有している者が、本件広告を読んだ場合には、原告は何らかの原因により、本件製品の製造権を喪失したとの認識を生じるものと解されるから、本件広告は、原告の営業上の信用を毀損したと認められる。このことは、証拠(原告代表者)によれば、平成九年八月ころ、原告と取引関係のある大豊建設の札幌支店勤務の社員が、本件広告を見て、原告に対し、本件製品にかかる製造権を被告に譲渡したのかと問い合わせをしてきたことがあると認められることからも首肯できる。

(二)  被告は、特許権は通常実施権により実施される場合もあるから、製造元と称する者が原告の外にいたとしても、特許権を他に譲渡等したとまでは認識されることはないと主張する。

右主張のうち、特許権を他に譲渡したとの認識が生じるためには、その前提として、本件広告を読む者が本件製品は特許権の実施品であるとの認識を有していることが必要であるところ、そのような事実が原告の取引関係者等に知られていたと認めるに足る証拠はないから、本件広告により、特許権を他に譲渡等したとの認識が生じるとは認められない。

しかし、右主張が、本件広告を読んだ場合に、被告は通常実施権により本件製品を製造しているのであって、原告が何らかの原因により、本件製品の製造権限を喪失したとの認識が生じるとは限らないとする趣旨であれば、失当である。

なぜなら、既に判示したとおり、本件製品は本件特許権の実施品であるとの事実が原告の取引関係者等に知られていたと認めるに足る証拠はなく、また、原告は、本件広告が掲載された当時、本件製品を独占的に製造していたのであるから、そのような状況で、本件広告を読んだ者が、被告は本件特許権の通常実施権の設定を受けたと想到するとは考え難いからである。

(三)  他方、原告は、本件広告により、原告が倒産したと認識され、自己の信用が毀損されたと主張する。

しかし、右主張の根拠として、原告は、本件広告が掲載された時よりも前の事情を主張しており(第三、二【原告の主張】3(一)及び(二))、右事情が本件広告の掲載と因果関係のないことは明らかである。また、原告代表者自身、原告が倒産する危険があると言われ取引を拒絶されたのは、建設業の不況で、どこが倒産するか全く分からない状況で、①原告の代表者の息子は被告に勤務しているから原告は被告に吸収された、②原告は昭和建材リースの不渡り手形をたくさんもらっているから資金がない、③原告の代表者に社員がついてこないということを理由にされたと供述し、本件製品の製造権限を被告に譲渡したということを理由に挙げられたことはなかったと明確に供述している。

したがって、仮に原告が倒産するとの風評が生じたことにより原告の信用が毀損されたとしても、それは本件広告とは因果関係のないものである。

3(一)  被告は、本件広告は原告の要請、許諾に基づいたものであり、本件広告には、設計監理を原告がしている旨も併せて表示しているから、原告の信用を毀損していないと主張する。

しかし、仮に、原告と被告が本件業務提携を締結する際、原告代表者が被告代表者に対し、「被告がノップの北海道の育ての親なので、北海道におけるノップについては一切を任すからメーカーの立場で営業して欲しい。ノップを北海道で育てて欲しい。」というような趣旨の発言をしたとしても、争いのない事実記載のとおり、本件契約三条一項において、被告は、本件製品を製造しないと定められていることからすると、右発言は、原告が北海道における本件製品の販売を被告に独占的に任せるに当たって、北海道において本件製品の販売の拡充は被告の営業努力にかかっているから、単なる販売店という気持ちではなくメーカーと同じくらいの意気込みで責任をもって本件製品の販売に当たって欲しいという原告代表者の気持ちの表れであった認めるのが相当であり、右発言がそのような意図であったということは被告代表者も十分承知していたものと認められる。右認定に反する被告代表者の供述は信用することができない。

したがって、右発言から、被告が対外的にも製造元であると表明しても良いという承諾があったとは認められないから、被告の右主張は採用することができない。

なお、製造元と設計監理とは異なり、設計監理を原告がしていると表示していることをもって、原告が製造権限を喪失したとの認識が本件広告から生じなくなるわけではないから、右事実は、原告の信用が毀損されたとの認定を左右するものではない。

(二)  被告は、北海道建設新聞に、本件広告を掲載したからといって、北海道内において余り知られていない原告が、本件製品の製造権を喪失したと認識されることはあり得ず、本件広告による影響はほとんどないと主張する。

証拠(甲32)によれば、北海道建設新聞は、本件広告が掲載された当時、各号約一万六五〇〇部程度配布されていたが、北海道外に配布されていたのは約八〇部のみであったことが認められる。

しかし、本件製品が多く使用されている公共事業において、被告の直接の取引先はいわゆるゼネコン会社、又はその下請会社になると認められるところ、そのような会社は全国的に事業を展開していて、北海道にも支店を有していることは十分考えられること、事実、本件広告を見て原告に対し本件製品の製造権を被告に譲渡したのかと問い合わせてきた大豊建設も全国的に事業を展開しているいわゆるゼネコン会社であったことからすれば、本件広告が北海道内で主に販売されている新聞であったことは、原告の信用毀損が生じたとの前記認定を左右するものではない。

もっとも、被告の右主張は、次項で損害額を認定するに当たっては考慮する必要がある。

三  争点三(損害の額)について

以上のとおり、被告の行為は不正競争防止法二条一項一一号の不正競争に該当するところ、前記事情からすれば、被告が右行為を行うに当たって少なくとも過失があったことは明らかである。

ところで、既に判示したように、原告が本件製品の製造元であるということは、原告の建設業界における信用・名声・評価の基盤となる重要な要素と認められる一方で、(1)原告が倒産するとの風評が生じ原告の信用が毀損されたとしても、それは本件広告とは因果関係のないものであること、(2)本件広告により原告の信用が毀損されたといえるためには、本件広告を読む者が、原告に本件製品の製造権があると認識していた必要があるが、①本件広告が掲載された北海道建設新聞は、主に北海道内に配布されていたところ、②原告は、本件業務提携締結以降、北海道においては本件製品の営業活動を行っておらず、③本件広告を読んで本件製品の製造権に関して原告に直接問い合わせをしたのは、大豊建設一社しか認められないこと、④被告にも本件製品の製造権に関して問い合わせはなかったものと認められること(被告代表者)からすると、原告が月刊建設工業新聞で本件製品の広告をしていることは認められるものの(甲6及び7の各1と2。ただし、平成三年六月二一日付け新聞の広告には、原告は製造元ではなく、総販売元として記載され、製造元としては原告の関連会社の宗清資材株式会社が記載されている。)、本件広告を読んだ者のうち、原告が本件製品の製造権を有しているとの認識を有していた者は、北海道においては北海道以外の地域と比較してそれほど存在せず、本件広告を読むことにより、原告が本件製品の製造権を喪失したと認識した者は、北海道建設新聞の配布部数と比較してそれほど存在しなかったと推測される。以上の事実その他本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば、被告が本件広告を掲載し原告の信用を毀損したことにより賠償すべき損害の額は、金七〇万円と認めるのが相当である。

四  以上より、本件請求は、原告が被告に対し損害賠償として金七〇万円及びこれに対する不法行為後で本件訴状送達の日の翌日である平成九年九月二七日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小松一雄 裁判官 高松宏之 裁判官 安永武央)

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